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東京高等裁判所 昭和24年(新を)1322号 判決

被告人

松美河俊こと

呉河俊

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人池田浩一の控訴趣意第二点について。

(前略) 主要食糧を非生産者の許に買受けに赴く者は必ず貧者であり自宅においてこれを買受ける者は常に富者であるとの所論は経験則上到底これを認めることができないのみならず、法定の除外事由なくして主要食糧を輸送した場合には貧富の差別なく処罰の対象となるのであるから、輸送行為の処罰規定たる食糧管理法第九条、第三十一条、同法施行令第十一条、同法施行規則第二十九条を目して憲法第十四条に違反する法令であるとの論旨は理由がない。

(弁護人池田浩一の控訴趣意第二点)

もとより食糧管理法第九条、第三十一条、同法施行令第十一条、同法施行規則第二十九条によれば、主要食糧の無許可輸送は処罰の対象となる。併し生産者以外の者よりの買受行為は罪とならないのであるから、自宅に坐して「カツギ屋」より主食を買う者は罰せられず、一方「カツギ屋」より買うだけの資力がない為め自ら買出しに出掛けて生産者以外の者より買受ける者は、原判決の理論に従うと買受行為は罰せられないが自宅までの運搬行為を罰せられることになる。この結果は貧富の差によつて国民を不平等に取扱ひ、すべて国民は法の前に平等であることを保障する憲法第十四条に違反する。

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